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石牟礼道子全集 不知火 第13巻 春の城ほか
¥6,000
ことばの奥深く潜む魂から近代を鋭く抉る鎮魂の文学 「なぜこれほど美しい魂の人々が死ななければならないのか。これは、島原の乱天草四郎の物語にとどまらない普通の百姓の物語である、との想いに至るとき、その哀しみは自分ごとのように思えて、やるせない。」 (河瀨直美氏評) 関連情報 ●本全集の特徴 1. 『苦海浄土』を始めとする著者の全作品を年代順に収録。従来の単行本に、未収録の新聞・雑誌等に発表された小品・エッセイ・インタヴュー・対談まで、原則的に年代順に網羅。 2. 人間国宝の染織家・志村ふくみ氏の表紙デザインによる、美麗なる豪華愛蔵本。 3. 各巻の「解説」に、その巻にもっともふさわしい方による文章を掲載。 4. 各巻の月報に、その巻の収録作品執筆時期の著者をよく知るゆかりの人々の追想ないしは著者の人柄をよく知る方々のエッセイを掲載。 5. 別巻に、著者の年譜、著者リストを付す。 ●『石牟礼道子全集』を推す 五木寛之(作家)/ 大岡信(詩人)/ 河合隼雄(臨床心理学者)/ 金石範(作家)/ 志村ふくみ(染織家)/ 白川静(中国古代文学者)/ 瀬戸内寂聴(作家)/ 多田富雄(免疫学者)/ 筑紫哲也(ジャーナリスト)/ 鶴見和子(社会学者) ●本全集を読んで下さる方々に わたしの親の出てきた里は、昔、流人の島でした。 生きてふたたび故郷へ帰れなかった罪人たちや、行きだおれの人たちを、この島の人たちは大切にしていた形跡があります。名前を名のるのもはばかって生を終えたのでしょうか、墓は塚の形のままで草にうずもれ、墓碑銘はありません。 こういう無縁塚のことを、村の人もわたしの父母も、ひどくつつしむ様子をして、『人さまの墓』と呼んでおりました。 「人さま」とは思いのこもった言い方だと思います。 「どこから来られ申さいたかわからん、人さまの墓じゃけん、心をいれて拝み申せ」とふた親は言っていました。そう言われると子ども心に、蓬の花のしずもる坂のあたりがおごそかでもあり、悲しみが漂っているようでもあり、ひょっとして自分は、「人さま」の血すじではないかと思ったりしたものです。いくつもの顔が思い浮かぶ無縁墓を拝んでいると、そう遠くない渚から、まるで永遠のように、静かな波の音が聞こえるのでした。かの波の音のような文章が書ければと願っています。 2004年3月31日 石牟礼道子
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戦争童話集 完全版
¥880
空襲下の母子を描く「凧になったお母さん」をはじめ、鎮魂の祈りをこめて綴られた十二篇に、沖縄戦の悲劇を伝える「沖縄篇」二篇を増補した完全版。 野坂昭如 著 初版刊行日2025/4/22 ISBN 978-4-12-207646-4 出版社 中央公論新社
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路上の陽光
¥2,200
チベット文学を牽引する作家ラシャムジャ。 代表作「路上の陽光」をふくむ日本オリジナルの短編集。 日本を舞台にした短編「遥かなるサクラジマ」も収録! 第9回日本翻訳大賞最終選考対象作選出。 10歳の少年が山で父の放牧の手伝いをしながら成長していく姿を描く「西の空のひとつ星」、 センチェンジャの横暴におびえる中学校の教室を舞台に気弱な男子ラトゥクが勇気を持つにいたる「川のほとりの一本の木」、 村でたった一人の羊飼いとなった15歳の青年が生きとし生けるものの幸せについて考える「最後の羊飼い」など8作品を収める。 ラサは懐の深い町だ。見た目も言語も異なる様々な民族が、あらゆる通りを川の流れのように行き交っている。(本文より) 【著者プロフィール】 ラシャムジャ(lha byams rgyal/拉先加) 1977年、チベットのアムド地方ティカ(中国青海省海南チベット族自治州貴徳県)生まれ。北京の中央民族大学にてチベット学を修め、現在は北京の中国チベット学研究センターの宗教学部門の研究員としてチベット仏教に関する研究を進めるかたわら、チベット語の小説を雑誌等に発表している。小説集としては『路上の陽光』、『ラシャムジャ中編小説集』、『眠れる川』、長編小説『雪を待つ』、エッセイ集に『私の孤独、あなたの文学』がある。チベット語文芸雑誌『ダンチャル』の主催する文学賞を歴代最多となる5回受賞(うち1回は新人賞)しており、2012年には中国の民族文学母語作家賞、2020年には全国少数民族文学創作駿馬賞(中短編小説賞)を受賞しているなど、現在30‒40代の作家の中で最も注目される作家の一人である。 【訳者プロフィール】 星泉(ほし・いずみ) 1967年千葉県生まれ。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・教授。チベット語研究のかたわら、チベットの文学や映画の紹介活動を行っている。訳書にラシャムジャ『雪を待つ』、ツェワン・イシェ・ペンバ『白い鶴よ、翼を貸しておくれ』、共訳書にトンドゥプジャ『ここにも躍動する生きた心臓がある』、ペマ・ツェテン『ティメー・クンデンを探して』、タクブンジャ『ハバ犬を育てる話』、ツェラン・トンドゥプ『黒狐の谷』がある。『チベット文学と映画制作の現在 SERNYA』編集長。 (書肆侃侃房HPより)