2023/12/30 14:37
先日、発表したベスト本ー小説編ーに続き
今日は、人文書編です!有り体に言えば、小説以外編です。
サイエンス本をほとんど読まないので、この建て付けで発表します!
今年読みきった本は53冊で、小説が11冊でした。
今回はそれ以外の本の中からベスト3を紹介したいと思います。
さっそく発表いたします
第3位
佐藤俊樹『社会学の新地平』岩波新書
社会学の見学の祖でもあるマックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読み解きながら、近年注目されているニクラス・ルーマンの組織論と連結させることで、産業社会がいかに成立してきたのかに迫ります。
時代を越えたふたりの社会学者の共通した問題意識のつながりに感動しつつ、私たちが現代目にする(所属していたりもする)組織のありようを振り替えるいい本です。
彼らは合理的な組織が近代の産業社会を支えたというが、「合理的な組織」とはどんな組織なのか。
目から鱗の新しい社会学がここに誕生したと思います。
続きまして
第2位
広田照幸『日本人のしつけは衰退したのか 「教育する家庭」のゆくえ』講談社新書
1999年に書かれた教育社会学の著書は今でも色あせず、現代の家庭や教育を考える上で大きな道筋を照らしてくれます。
本書では大きな枠組みとして、日本が明治以降近代化するなかで、主に都市部の中流階級を発端にして、「教育する家庭」が誕生したと述べる。
子どもをどう教育するかというと、皆が異なる価値観をもっていると思われるが、「家庭で親が責任をもって子どもに教育を施す」という価値観は共有されている。この価値の誕生こそ近代の大きな変化であったそうです。
子どもらしく育てたいという童心主義や、いい学校への進学を目指す学歴主義も、どちらが正しく、間違っているという論点ではない考えが必要だと説く。
家庭や教育を考える上で、自分自身今後も参照するだろうと感じたので上位に入りました。
栄えある第1位は!
温又柔『台湾生まれ日本語育ち』白水社
台湾で生まれ、父親の仕事の都合で幼いときに日本に越してきた著者が、今まで日本で感じてきたことを記したエッセイです。
著者のアイデンティティのよりどころはどこなのか。
台湾人とは、中国人とは、また日本人とは誰のことなのか。そこに現れる言葉はいったい誰のものなのか。
日本人として日本に住んでいると、自分の国籍や言葉、それにまつわるアイデンティティに悩むことはほとんどないと思います。
また、日本語を自分たちの言語だと感じているのではないでしょうか。
この本はそんな当たり前を揺さぶり、常識とは別の、もう1つの世界の見えかたを与えてくれるでしょう。
もう1つ、この本のおもしろいところは、使われている言語が複数あるにもかかわらず、つまることなく美しい旋律として読むことができるところです。
私は、台湾語も中国語もできませんが、日本語の中に挿入される台湾語や中国語が自然に頭に入ってきます。
このこと自体がこの本のすごさを物語っています。
この著者は小説かであり、多数の作品を書いています。その作品もとても豊かで心に刺さる作品です。
以上、サカイ的!2023年ベスト本でした!
また来年もよろしくお願いいたします。
皆さまよいお年をお過ごしください。
サカイ